
高校入試問題の国語で取り上げられる作品は名作ぞろいです。
こちらの『一瞬の風になれ』はたくさんの学校で様々なシーンを出題されている小説です。
サッカーで実力もあり有名選手の兄、健ちゃんがいる新二がサッカーの選手として挫折し、幼なじみで天才スプリンターと注目されている蓮と一緒に公立高校で陸上競技に挑戦するというストーリーです。
高校1年生の新二の気持ちの揺れ動き、成長がダイナミックに描かれています。
うちの塾生の正答率はとても高く、皆もひきこまれ文章をすっと理解してくれたことがわかり大変嬉しかったです。
入試問題を解いていると続きが読みたくなることがたくさんあります。
この小説もその一つで手に取りました。
自分の高校生の時の感覚が呼びさまされ、キュンと切なさがこみ上げました。小説には時空を超える楽しさがあります。
私が一番心に残ったのは、主人公 新二が、自分もそんな風に走りたいと思っている幼なじみ 蓮。
その蓮が練習がきつく指導が厳しすぎて合宿から逃げ出した時のシーン。
「俺は、おまえがみっともないのはイヤなんだっ!」
「そういうのは絶対イヤなんだ。俺がみっともないより、もっとイヤなんだっ」
こんな泣き声でしゃべりたくない。
「逃げるな。一番みっともねえ」
蓮は何も言わなかった。
天才と呼ばれる兄、
健ちゃんや幼なじみの蓮にコンプレックスを感じながらも二人にあこがれ
大切に思っている高校生1年生の新二、
皆さんにもきっと共感できるところや心に響くところがあると思います。
ぜひ中学生の皆さんにも大人になった保護者の皆さまにも読んで頂きたい1冊です。
論説文と違って小説ははっきりと作者の意見が述べられることはありません。
けれどもストーリーを通して読者に伝えたいメッセージがかくされていて、そこに気づけた時まるで自分だけの宝物をみつけたような喜びを感じます。
入試問題にはそんな本が大好きな国語の先生方が、受験生のみなさんに読み解いて欲しいメッセージの隠された小説が使われています。
ちょっと視点を変えて挑戦してみてはいかがでしょうか。